不安やイライラを根本的に消す方法『しない生活 煩悩を静める108のお稽古』小池龍之介

書評

なぜこの本を手に取ったのか

メッセージアプリでやりとりすることが当たり前の現代、あなたはメッセージ送信後に既読スルーされたり、または返信が遅いとイライラしませんか?

私は鬱になる前も、なった後も自分の気にしすぎる性格不安そして些細なことでイライラしてしまう事に悩んでしました。「おおらかな性格になりたい」と思ってはいたのですが、ではどうすればそうなれるのかがわからなかったのです。

心理学の本や心の病気に関する本も何冊か購入し、読みました。それらには心理学者や医者ならではの専門的な書き方で「心」について述べられていたのです。

色々な成分や器官の名前が羅列され、何がどう分泌されてどういう影響があり、どのように動いて思考が働いていくのか。そういった内容でした。正直素人にはわかったようなわからないような読後感です。

ただこれはお坊さんが書いた物です。お坊さんの法話って面白いですからね。修学旅行で行った薬師寺のお坊さんの法話は楽しく聞けたのでそれを思い出し、読みたいと思ったのです。

何を「しない」生活なのか

主な内容

・イライラしたり不安になる原因は自分の「承認欲」のせい
・人間は成長すると同時に自己中心的な思考回路が出来上がっている
「考えすぎない」「気にしない」為の思考をつくる方法
・自分の心をコントロールすることは出来ない、まして相手を思い通りにするなど不可能だ
・現代の便利で満たされた生活を「当たり前」と思うと、そうではない部分に不満が生まれる
・自分の心を客観的に見つめることで穏やかになることが出来る

5つの「しない」

この本では「つながりすぎない」「イライラしない」「言い訳しない」「せかさない」「比べない」という5つの「しない」をそれぞれの章で紹介しています。仏教の教えは大昔からのものですが、現代の科学技術の進歩で便利で豊かな生活を送っている私たちにわかりやすく解説されていました。

SNSの登場でいつでもだれとでもつながれることの弊害や、自分の承認欲から起こるイライラ、スピードが重視される現代でせかせかしてしまう事、競争社会で他人と比べることがよくあるといった、誰にでも当てはまることが多いです。

 特に注目したのは「つながりすぎない」

ものごとは公平に、釣り合いが取れてなきゃ気が済まないという強迫観念がつきまとっているのです。

近年は多数の人と手軽につながれるようになりました。LINEなどのメッセージアプリやFacebookなどのSNSが増えてきたからです。そこでメッセージのやり取りをする機会が増え、そのスピードは格段に速くなりました。

すると既読スルーなどの相手の出方に対して不安やイライラが起こるようになります。「私は早く返信しているのだからあなたも早く返信して!」と考えるようになることが原因です。

それはまさに上記の「公平に」「釣り合いが取れていないと気が済まない」といった強迫観念が根底にあるからです。知らず知らずのうちにこの強迫観念に支配されているので、この支配に気づき、我に返って冷静になるようにすることでイライラを解消することが出来るのです。

つながりすぎず、自分の心も相手の心も尊重することで心に余裕が出来ます。

「公平」への強迫観念を捨てる

無意識下の気持ちを自覚して我にかえる

返信が遅い人に対するイライラというものの原因なんて「相手が悪いんだからイライラするのは仕方ない」と思っており、自分ではどうすることも出来ないと考えていました。

でもこの公平であるべきといった強迫観念に気づいてからは「このイライラは自分の思考からくるものなんだ」と自覚することが出来ました。

「こちらはちゃんとやっている(返信している)のだからあなたもちゃんとやらなければいけない」なんて、そんなことは自分で勝手にそう思い込んでいるだけの事なのです。そんなルールはありませんし、相手がそれを守らなければいけないなどと命令することなどできません。(※あくまで私人間の話ですが)

根底にある意識は「自己中」

既読スルーへのイライラは自分の「公平であるべきという強迫観念」から来るものでした。結局は「私の為にしてほしい」という思いが根底にあったという事です。知らず知らずに私は自己中心的な考え方をしていたのでした。

これをわかることが出来たのは大きな収穫です。自分の中でこんな思考のプロセスが働いていたのかと分かると、「自分はどれだけ自己中だったのか」がわかり、そこを改めようと考えることが出来たからです。

すると気持ちは楽になりました。「あの人にも事情があるのだ、忙しいんだろう」「私は私、相手には相手なのだから価値観が違うのは当たり前」と思えることが出来るようになりました。

ひらなり
私は通知OFFにしていて一週間くらいガン無視した経験もあります。「あー!しまった!ごめんなさい!」となってしまった事もあるので、それも含めて「イライラしないようにする」と心に決めています。

明日から実践したい3つの事

①.自分と相手は違う事を認識する

自分は自分であり、そして家族や友人・恋人は他人です。いくら仲がよかろうと他人であることには変わりありません。ですから自分が考えていることを他人が考えているとは限りません

価値観や考え方が違えば行動も変わります。だから相手は自分とは違う人間なのです。これを覚えておけば「私はメッセージをすぐ返信するのにあの人はなんで既読スルーするの!?」「私が言っていることをなんでわかってくれないの」と怒ることがバカバカしくなります。

なぜなら、相手は自分ではないからです

②.心をコントロールしようとしない

これまでに書いたイライラの原因が発生した時に、「あぁ私は幸せだなぁ」と思うでしょうか?表には出さないかもしれませんが心の中ではマイナスの感情がどうしても生まれてしまいますよね。

心を自分の意のままに操ることは出来ません。でも自分の心を客観的に見るようにすればいいのです。「これも煩悩なんだ。だからイライラしている」と、ふと我にかえることが出来れば冷静になれます

他人の心にも同じことが言えます。自分の心もコントロールの対象外です。ましてや自分とは違う他人の心なんてもっとコントロールできません。コントロールしようとするから出来なくてイライラするのです。しないことがベストです。

③.感謝する

返信が遅い」「そっけない」「あいつは間違ってる」などと、イライラすることはたくさんあります。物事にいちいち怒っていては疲れてしまいます。

それよりも、「返事をくれたこと」「自分の話を聞いてくれたこと」といった部分に着目し、そこに感謝するようになると心が穏やかになります。相手が間違っていると感じても、相手には相手の考えがあっての事です。「こういう考え方もあるのか」と受け止めればよいわけです。

これは様々な事にも使えます。毎食ご飯を食べることが出来る・暖かい布団の中で眠れるといった生活の事も感謝できるようになれば、何かイライラの原因が発生してもおおらかに構えることが出来ます

最後に

 

このほかにも様々な体験をもとに仏教の教えを織り交ぜながら心の中の解説をしています。著者のお坊さんでさえこんなに心が揺れ動いてしまうんです。俗世の人間が悩んだり不安になったりイライラするのは仕方ないとも思えるようになりました。

この本は2ページで1つの話が完結するのでとても読みやすかったです。煩悩の数、108のエピソードを読むことが出来、お坊さんの日常も知ることが出来ましたし、佛陀の教えを堅苦しくなく理解できました。

書き方も面白く、ときどき「フッ」と笑ってしまうようなエピソードも多かったです。とても親近感がわくエピソード満載ですし、気軽に読むことが出来ました。

短時間、電車の中でこまめに読むことに向いています。108個ありますのでどれかは当てはまるものがあるはずです。

自分の心、人間の心はまだまだ解明されていませんが、佛陀の教えというものは「なるほど」と思われてくれることばかりです。

まるでSNSの隆盛や現代社会の疲れてしまう面を知っていたかのように説いていますので、「仏教ってどんなものだろう」と思っている方にもおススメしたいです。

 

 

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