医者の知見と患者の体験から紐解く鬱病『新版 うつ病をなおす』

意を決して相談した相手に「それくらいの事で落ち込むなよ」なんてことを言われたことはありませんか?もしくは、友人や部下が深刻な顔をして相談に来たと思ったら「そんなことで憂鬱になっていたのか」と感じたことはありませんか?

ひらなり
人間は1人1人、何をどう感じるかというのは違います。それを知ることが出来れば鬱を予防することも、改善することの一歩にもなります。
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この本を手に取った理由

私はなぜこの本を手に取ったのかというと、この直球のタイトルにひかれたからです。しかも著者(野村総一郎氏)はメンタルクリニックの所長等の肩書を持つ権威ある人物です。キャリアのある現役の医者による鬱病の解説本であれば、過去や現在の自分の症状を理解して改善することが出来ると考えました。

そして旧版の発行から12年たって再び2017年に新版が出たという事も理由に挙げられます。近年は鬱に関する本が大量に出ています。新聞広告なんかでも鬱関連書籍の広告を良く見るようになりました。それらとは違い、12年も長い間読まれてきた本であれば、「読んでみたい」と考えたのです。

患者の体験談と医者の知見、両方が読める

幅広い症状を網羅している

目次

プロローグ 新版の刊行にあたって
1章 うつ病の症状と診断
2章 メランコリー型うつ病
3章 現代うつ病
4章 特殊なタイプのうつ病
5章 うつ病との鑑別が必要な病気
6章 うつ病の治療メニュー
7章 うつ病にかからないための考え方改造法
8章 うつ病はなぜ生じるのか
おわりに

お医者さんの書いた本だからちょっと小難しいこと書いているのかな?と覚悟して本を開いたのですが、そんなことはありませんでした。専門用語も脳のメカニズムがどうのこうのという記述も出てこず、肩の力を抜いて読むことが出来ました

主な内容は患者の体験談と著者(医者)の診断、そして改善へむけた取り組みを述べています。その為、鬱病の人は自分の症状が「自分だけじゃないんだ」と確認できますし、医者からの解説がありますので鬱ではない人も「こういう心理状態なんだ」と知ることが出来ます

この本では昔からの鬱と、新型(現代)うつなどの症状と対策も書かれています。下記のように私に当てはまることも書かれていましたし、それ以外の症状も複数の患者の体験談と共に述べられていました。その為、この本を読めば幅広い鬱の症状がわかることが出来ます。

例:鬱は極端なストレスによるものとは限らない

第一に「うつ病の場合、必ずしもひどいストレスに出会ってはいないのに、ひどくゆううつになる」ということである。

最初にお聞きした「それくらいの事」が、人によって受け取り方が違うという事です。確かに火事で家が焼け落ちてしまったり、大切な人と死別してしまうようなことは憂鬱になる極端なストレスの原因になります。これはどうやっても落ち込む理由になりますし、この原因に対する憂鬱で鬱病と決めつけることは出来ません。

しかしそこまでいかない事でも、何か嫌なことが起こった場合(例えば仕事でうまくいかない事、好きな球団が負ける事などなど)に憂鬱な気持ちになることがあります。問題はそれを長い間(二週間以上)引きずり、日常生活に支障が出る程落ち込むことがあればこれはうつ病と診断される可能性が高いという事です。

小さなきっかけから鬱になることもある

思い出してみると、私もそうでした。直接鬱になったきっかけというものは仕事上のトラブルでした。正確に言うと他人のトラブルの責任を自分が背負う事になったという事です。

ただこれは社会人であれば起こりうることですし周りの人も「本当は君のせいじゃないのはわかってるし、サラリーマンやってるとこんなことあるのも仕方ないさ」と言ってくださいました。

頭ではそれを理解していましたし、周囲の気遣ってくださる方々に感謝していましたが心の中には異変がありました。それは1か月以上たってもそのトラブルの事をずっと引きずっていることです。「お前が悪い」と言った相手方の顔や声が全然頭から離れてくれません。

「切り替えていこう」と思うのに憂鬱な気持ちがなかなか抜けず、考えれば考えるほど「自分が悪いんだな、そうだ自分が悪いんだ…こんな自分なんか会社からも社会からも必要とされない」と自責の念にかられることになり、半年後ようやく心療内科に行って「抑うつ状態」と診断される事になります

この本を早く読んで鬱について知っておけば早めに対処できたかもしれないなと思った部分でした。

本人、上司、子とその親など全ての人が読んでほしい

鬱病の患者本人も自分を知ることが出来る

この本で紹介されている様々な症例で、当てはまるものをメモして医者に行けばゼロから説明する手間が省けます。自分の言葉で自分の症状を説明することは難しかったので、この本で「あ、これ自分の症状だ」という部分を見つけてメモをしておけば医者との意思の疎通がしやすくなります。

また、今の薬を服用しても改善しない場合、自分の症状を調べる為にもこの本は必要になってきます。大分解明されてきたとはいえこういった心の病気は誤った診断をされることもありますし、その診断に基づく薬を飲んでも意味はありません。ですから病気について知ることも必要になります。

周囲の人も読めばどんな病気かわかる

心の病気はなってみないとその人の気持ちはなかなか理解できません。理解できないとどうしていいかわかりませんし、良かれと思ってかけた言葉が逆効果になることもあります。

「そんな事で悩んでないで飲みに行こう」と言ってくださる人もいましたしその誘いはありがたかったのですが「そんな事」で済ませられないから鬱になってしまったのです。ではなぜ「そんな事で悩んでいるのか」がわかる本になっています

また不登校の子供と鬱の関係も書かれていますのでその親御さんが、お子さんの症状を知るためにもこの本は読んでほしいと考えております。

鬱病は難しい病気です。本人も周囲の人もどうすればいいのかわからないことが多いです。しかしこの本を読むと幅広く鬱病について知ることが出来ます。

まとめ

・患者の体験と医者の知見からうつ病を知ることが出来る
・うつ病患者本人もこの本を読むことで自分の症状を把握できる
・周囲の人も読むことで本人の気持ちや病気のことがわかる

一言で鬱病といっても症状は様々です。風邪のように熱・喉・鼻などと単純に分けられるものではありません。ただ、知っておけば本人も周りも対処のしようはあります。おススメしたいというよりも、どうか読んでほしいという気持ちでいます。

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