東京のIT企業に就職して6年がたち、そのうち2年近くを鬱状態で過ごしました。そして、最終的に退職することになり故郷へ帰ります。
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東京の水は合わなかったようだ
東京から逃げるように故郷へと帰った私は身も心も荒んでいました。人間不信・マイナス思考・ネガティブな妄想、体は力が入らず糸が切れた操り人形のようにばったりと横たわっていました。
何もしたくない…何もできない…いったい自分は今まで何をやってきたのだろう…、いや何をやっても結局何も残らなかった…何をやっても無駄だから何もしたくない。こういった思考がずっとループしていたのです。
ふと考えると、単に内定をもらえたからという理由で就職してしまったのです。「稼げればいいや」という気持ちでの就職です。将来の事を自分では全く考えず、そして生きがいややりがいのない決断でした。
確かにお金は稼げました。幸い病気で退職する時は生活に必要なお金は貯まっていました。しかし健康などのお金以外の部分は失った気がします。「私は治療費の為に働いていたのか?」というむなしさが残りました。
植物に触れたら癒された
田舎に戻って1か月、だんだんと調子が良くなるとベッドから出て庭の木や花をボーっと見ている時間ができてました。すると、そういえば小さいころ庭で遊んでいたという事を思い出したのです。土いじりをしていたころのあの穏やかな気持ちもです。
実際に私は庭に出てみました。私が小さなころに植えられた木々は健やかに大きく育っていました。私が都会でもまれて、様々な経験をしていたころ、この木々たちも同じように嵐や自然災害を耐えて過ごしたのでしょう。ところどころに太い枝の折れた痕や曲がってしまった枝が見られました。
でも、とても立派に育っていたのです。私の背丈なんかゆうに追い抜いている木もあります。なんだか幼馴染と再会したような気分でちょっと感動しました。そこで私は庭木の手入れをしてみることにしたのです。
まずは草取りからはじめました。当時は夏です。黙々と草取りをしていると庭がさっぱりしてくるとともに大汗をかきました。肉体的には疲れましたがなんだか木々たちに「ありがとうよ」と言ってもらえている気がして達成感が感じられたのです。
今まで人やモノやPC画面にくぎ付けになり、プレッシャーやストレスで胃がキリキリしていたころに比べるとなんて晴れやかなんだろうと感じたのです。
これで落ち着きました。ここにはわずらわしい人間関係はありません。相手は植物です。悪口も意地悪も無い社会でした。
植物に触れている間は無心になれる
その後も庭木の手入れや、大きくはないですが農作業の手伝いをしました。土いじりをしていると何も考え無くなったのです。無心で集中できました。
徐々に心や体調は回復してきました。根拠のないイライラは消えていき、マイナス思考も起こりにくくなってきたのです。頻繁に起きていた頭痛や腹痛、ひきやすかった風邪もひかなくなりました。
自然豊かな場所ですから虫に刺されたりもしましたが、都会に比べればたくさんの生き物がいます。でもその生き物たちに対する想いも変わってきたのです。
都会に住んでいたころは虫一匹出ると、まるで親の仇のように殺虫剤をまき散らしていました。とても汚いもののような扱いで虫と対峙していたのです。しかし田舎に戻ってからは「あ~また入ってきちゃったよ」といった具合で、箒と塵取りで取って庭にポイするようにしています。(Gに対しては容赦しませんが。)
こんなに穏やかで清々しい気分になれたのは何年振りかと思うくらいに、さっぱりとした心境になったのです。いままでサラリーマン時代の悩みは消えていました。気づけば自分本位の考え方が頭の中を支配し、それのよって鬱になってしまいましたがこんなにも大きな自然に囲まれていて、自分はその中の小さな小さな存在だと認識できたのです。
自分で野菜をつくると美味しく食べられる
食に対しても感謝の気持ちを持てるようになったのです。都内に住んでいたころ、食事は急いで済ませることが多かったです。栄養が取れて手早く食べられればそれでいいと思っていました。
しかし、農作業をすることで自分が食べているものがどれだけ大変な労力で作られているのかがわかりました。勝手に生えて成長して実がなってくれれば苦労はありませんが、そうなるまでの農家の方の努力がわかったのです。
この写真は、私が世話をしたミニトマトです。夏場に数日放置したら強風でごちゃごちゃな枝ぶりになってしまった時の写真と、実際に赤くなってから収穫した実です。
正直、売っているものに比べると甘さはそれほどなくむしろ酸っぱかったです。ですが私にはとても美味しく感じました。
それがわかってからは早食いをしなくなりました。食べるものと、作ってくださった方に感謝をするようになり、味わってゆっくり食べるようになったのです。するとよく噛んで食べるようになったことから胃腸の調子も良くなりました。
鬱の回復3点セット
この体験でなぜ私は症状が改善できたのかを考えてみました。
日にあたる
庭木の手入れや農作業をするとき、屋外に出ますからどうしても日光を浴びます。ITの仕事を始めてから、さらに鬱と診断されてからは外に出ず一日の大半をベッドで過ごし、カーテンも開けていませんでした。その為体温は上昇せず、体は動かせず薬漬けでどうにもならなかったのです。
しかし日に当たるようになってからは体温が上がり、動き回れるようになりました。そして明るい日差しを見ているだけで、日に当たっているものも日光を反射して輝いて見えるようになったのです。日光は私の心と体のエネルギー源になりました。
植物を育てる
庭木の手入れをするようになってからは時間がすすんでいることを認識できるようになりました。それまでは毎日が同じことのループに思えて将来に希望が持てませんでした。
仕事をしていた時はずっと会社と自宅の往復と薬を飲んでバッタリと寝る…。休職したら薬を飲んで寝て最小限のものを食べてまた寝る…その変化のない繰り返しでした。
植物を育てるようになってからは1日1日が別物だと認識できるようになりました。植物はぐんぐんと成長していきます。昨日小さかった芽が今日は大きくなっているのです。青かった実も赤くなるのです。
そこで私も「このままじゃ嫌だ、自分も1日1日着実に回復できるようにしていこう」と思えるようになったのです。また、純粋に植物の成長を見るのは楽しくそして喜びでした。
体を動かす
庭木の手入れや軽い農作業ですが、身体を動かすと気分が良いです。そして動かしているときは余計なことを考えることがなくなります。さらに黙々と作業をして汗をかくくらい頑張るとストレスが発散出来てすっきりします。
今まで無かった食欲も回復します。体を動かしてから食べるご飯の美味しさは格別です。しかもそれが自家農園で自分で育てた野菜であればなおさらです。汗を流して食う飯は美味い!
回復のタイミングに合わせて
ここまで、私は「自然」という存在のおかげで鬱の症状が回復したことを書きました。日に当たり、野菜を育て、体を動かすことで自然というものに親しむことで穏やかな心を取り戻すことが出来たのです。
ですがそれまでは1か月ほど寝込んでいました。それが出来るまでの体力が無かったり精神的な事情があったのです。だから力が出なかったり体が動かせない場合は無理にはしないようにしてください。
少しずつ回復し始めたら、やってみてください。野菜をプランターで育てたり、日向ぼっこしながら本を読むことや、散歩も十分に効果的です。