トラブル発生から3か月後、どうにかこうにかその案件は終了してメンバーは本社に戻ることになります。私はあの場所から解放されたことに対しものすごくほっとしていました。そして本社に戻るとトラブルを知っている人は私を温かく迎えてくれました。
先輩や上司そして取締役の人にもありがたい事に声をかけていただくことが多かったです。長時間労働が常態化している業界ですが本社の方々は優しい人が多かったです。
しかしそのありがたい言葉が、かえってプレッシャーになっていることを私も含め誰も考えていませんでした。
※ここで一つ申し上げておくことがあります。結果的に有難迷惑になったという事を書きますが当時の方々に対して文句を言う愚痴のような記事ではありません。今でもその方々には感謝しています。
優しい言葉はありがたいけどプレッシャーになる
「あいつらがおかしいのさ、君が悪くないのはわかってるよ。」
「社会ってこんなもんなんだよなぁ。ま、これも経験さ。大丈夫、次の仕事頑張ろう。」
「これでまた一つ成長できたと思ってさ。落ち込む必要なんかないよ。」
「元気出てるかー?飲み行くか!愚痴聞くよ。」
このように私の落ち込んだ気持ちを軽減してくれる言葉をかけていただき、とてもありがたいなと感じていました。
しかし私が相当落ち込んでいたのでしょうね。3ヶ月くらいにわたって色んな方々からそのような声をかけていただくと、そのトラブルを過去の事と割り切ることが出来なくなってきました。
そして「こんなにも気を使わせてしまって申し訳ない。元気にふるまおう」という気持ちも芽生えてきます。そう考えてからは努めて明るく振舞うようにしました。鬱になる前はこんなだったかな?とか考えながら声を大きくしたり笑顔をつくったり飲み会にも今まで以上に出席するようにしました。
無理をしていました。今まで好きだったけど鬱になってからは飲みたくなくなった酒を飲み、笑う気が無いのに笑い、しゃべりたくないのにしゃべるなんてことは、苦痛以外の何でもありませんでした。発症前だったら楽しかったのですが、この時はつまらないものでした。
家に帰れば孤独感に襲われ、会社では励ましの言葉の嵐です。そしてその励ましに応えなければならないという義務感のようなものがあります。心が落ち着くことはありませんでした。心身共に疲れてきました。
とにかく元気にならなきゃ、みんなに心配してもらっているのだからなんとか頑張らなきゃという焦った気持ちも生まれます。焦り・空元気と疲労はどんどん蓄積していったのです。
そして連日の励ましの言葉(という名の記憶の蒸し返し)と孤独に悩んでいることで、あのトラブルを毎日反復して思い出してしまう状況になりました。毎晩毎晩鬱々とした気持ちになり眠れなくなります。
プレッシャーに押しつぶされ鬱になる
そして毎晩反復して思い出し悩むことから記憶は定着し、孤独に考え込むことでさらにそれを悪い方向に考えるようになってしまいます。
「あのトラブルを起こしたのはなんやかんや結局自分がちゃんとチェックしなかったからだ」
「トラブルを未然に防げなかったのは私が無能だったからだ」
「世間では普通レベルのトラブルで毎晩悩んで眠れないのは自分が弱いからだ」
「そうなると自分は無能でメンタルの弱いクズ人間なんだ」
「会社の人だって口では慰めの言葉をかけてくれるけど、どうせ本心では「この程度で落ち込む面倒くさい奴」って思ってるんだ」
そして最終的に「自分は無能で弱い人間だ。こんなダメダメ人間、さっさと死んでしまった方が良い」という結論を出します。今までの25年間が全て無駄だった、何もできなかったしょうもない過去にしか見えなくなったのです。
そして将来の事も、過去に何もできなかった人間がこれからまともに生きていけるはずがない、だから生きていても仕方ないと考えるようになったのです。
そこから私は生きるという事にやる気をなくします。会社も休みがちになり、食欲もなくなります。夜は言いようのない恐怖感に襲われ眠れません。朝はとても体が重くて起きることが出来ません。
だんだんと鬱の症状は悪化していく事になるのです。
コメント